「戦」という字は「單(弓・盾)」「戈(ほこ)」から成る。日本という国は非常時に備えやはり武器を研いではこなかった…、と耽読した◆武漢肺炎をめぐり欧米諸国は早々に都市封鎖した。「戦時」を想定したシステムがあり、パンデミックという歴史的「危機感」も根強いからだ。一方、「非常時」という観念さえ怪しい日本は基本、要請ベース。発想の根本的違いとその強弱が、露呈した◆日本のやり方は全部〝平時〟の対応―。『国家の怠慢』(新潮新書)では、数量政策学者の髙橋洋一氏と政策シンクタンク代表の原英史氏が知と論理と対話を「武器」に、日本の根っ子にある問題を取り出して見せ、政策的解と共に提示する◆財務省が嫌がる危機対応時の特効薬、消費税減税。教育国債による人・知識への投資。人権侵害との的外れな文句で活用されないマイナンバー制度。有能な知事と無能な知事の差、等々。臨戦態勢の諸国家の常識の外で、日本は生きているようだ◆川を上り、海を渡れ―。歴史を遡って過去の経緯を調べ、海外の事例を調べる。髙橋氏の説く、普遍的なルールを見出す方法論である。国民が普遍性を求めないツケは、〝異形の国家体制〟という形で、我々自身の非常時に回ってくる。(S)