サンゴ移植、政治介入は疑問 

 玉城デニー知事は辺野古移設に反対しており、国にサンゴ礁移植の許可を出さないことも抵抗手段の一つと見られている。防衛局は昨年4月、軟弱地盤改良のための設計変更を県に申請したが、県は1年以上経過しても判断せず、知事は不許可とする意向を示唆している。そうなれば県と国が新たな法廷闘争に突入するのは必至だ。
 行政の気に染まない許認可の申請が提出されても、法的な問題がなければ許可しなければならないが、担当者があれこれ理由をつけて判断を引き延ばすのは間々あることだ。県が今やっているのは、まさにそういうことである。
 許認可のような行政手続きは法的な基準に基づいて粛々と行われるべきで、本来、政治判断が介入する余地はない。そこに政治判断が働くのであれば、裁量権の逸脱や濫用に当たる可能性があることを判決は示している。
 現在は辺野古移設を巡る国対県の争いなので、県に同情する声があるのも事実だ。だが県の論理が認められれば、県民のさまざまな許認可申請に対しても、知事がいちいち政治判断する前例を作りかねない。それでは法の支配ではなく、人の支配になってしまう。
 一方、最高裁では県の主張に理解を示した少数意見もあった。軟弱地盤の大幅な改良工事を余儀なくされた時点で、知事の埋め立て承認判断が実質的に無意味になっているとした。
 特別採捕許可の対象であるサンゴ礁がある海域には軟弱地盤はなく、工事を進めることは法的に可能という主張に対しては「木を見て森を見ず」の弊に陥っていると非難した。
 少数意見は、軟弱地盤の存在を理由に県が工事を全面停止させることを可能にするもので、首肯できる内容ではない。だが軟弱地盤の存在が政治的、法的に大きな問題に浮上しているのは事実で、国はこの問題にしっかり対処し、移設を着実に進める必要がある。

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