【視点】沖縄で重要性増す自衛隊

 沖縄では若い世代を中心に、自衛隊の活動に対する支持が広がっている。在沖米軍に対する県民感情が依然厳しい中、米軍の役割も肩代わりする形で、自衛隊は県民の命や財産を守る活動を拡大させる必要がある。
 陸、海、空自衛隊の統合演習が19日から30日まで、県内などで実施される。万一の事態にしっかりと備え、この機会に沖縄における自衛隊のプレゼンス(存在感)を示すことで、県民の安心安全に寄与してほしい。
 演習では水陸両用作戦、ミサイル防空、対艦攻撃、後方補給など幅広い項目で有事の際の動きを確認する。自衛隊員約3万人、車両約1900台、艦船約10隻、航空機約140機を動員し、米軍も約5800人が参加する。
 先島諸島では、19、20の2日間、石垣港に艦船が寄港し、人員30人とトラック1台を与那国島に向けて輸送する後方補給訓練が予定されている。
 自衛隊が定期的に演習を行って練度を上げるのは当然だが、尖閣諸島を抱え、台湾にも近い先島諸島が演習地の一つに選ばれたのも、全く驚くことではない。
 今や米国に肩を並べる超大国になろうという中国だが、ほかならぬ八重山に、その領土的野心が向けられている。中国とは対照的に、民主主義的な社会を成功させている台湾の存在も、中国には目の上のこぶだ。
 地図の上では砂粒のような八重山だが、中国の台頭という世界史的な流れの中で、否応なくホットゾーン(危険地帯)に押し上げられつつある。県民自身がそうした自覚を持たなくてはならない。
 日米同盟は重要だが「自分の国は自分で守る」という当然の気概なしには、県民は守れない。奄美大島、宮古島、与那国島、そして石垣島で進む陸上自衛隊の配備が重要なのも、そうした日本人の決意が問われているからだ。
 宮古島では14日、陸上自衛隊保良訓練場の弾薬庫に地対艦、地対空ミサイルなどが搬入された。2019年、住民への説明なしに弾薬が持ち込まれたとして弾薬類が一時撤去されていたが、ようやく本来の装備を整えたことになる。
 ただ反対派住民らが弾薬を積んだ車両を阻止しようと座り込みなどを行い、周辺は一時混乱した。
 玉城デニー知事は14日、「自衛隊は、地元宮古島市と協議を行い、事前に情報を共有しながら搬入の準備を進めたものと承知している」とコメントを出した。
 しかし翌15日、報道陣の質問に「搬入を容認しているわけではない。スケジュールありきで配備を進めるのは反対だと多くの住民が思っている。その意向をくまずに配備計画を進めるのは遺憾だ」と述べ「知事は搬入を容認した」との見方を否定した。
 知事の言動がぶれているのは、保守から革新まで混在する支持層に配慮しているからだと言われている。
 自衛隊の活動にさまざまな意見があるのは事実だが、県民の安全に責任を持つ立場にある知事が、確たる根拠もなく弾薬の搬入に待ったをかけるような発言をするのはおかしい。
 いずれにせよ安全保障問題に対する知事の無定見が改めて露呈した形で、県民としては不安である。

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