【視点】食料自給率低迷 平時から方策を

台風6号の影響で石垣島に向かう貨物船が止まり、島内の大型スーパーでは食料品の棚が一斉に空になった。台風の影響が長期化すると、肉、野菜、加工品など、さまざまな食料品が次々と入手困難になっていった。私たちの食生活が島外からの食料移入で支えられていることを、目に見えて実感させる光景だった。
八重山は、島国である日本の縮図でもある。農水省の発表によると、2022年度の日本の食料自給率は、カロリーベースで前年度と同じ38%、生産額ベースでは前年度比5ポイント減で過去最低の58%だった。
カロリーベースは、国民一人当たりの一日の栄養価に占める国産品の割合、生産額ベースは、国民に供給されている食品の生産額のうち国産品の割合を示す。日本の食料自給率をカロリーベースで見ると、日本人が1日に摂取する栄養のうち6割は輸入品に頼っていることが分かる。
諸外国の2020年の食料自給率を見ると、カロリーベースがカナダ221%、米国115%、生産額ベースがカナダ124%、豪州110%などとなっており、世界的に見ても日本の食料自給率は低水準にとどまる。
政府は2030年度の食料自給率をカロリーベースで45%、生産額ベースで75%とする目標を掲げているが、現状では及ばない。
都道府県別の食料自給率(21年度)を見ると、カロリーベースでは北海道が223%、生産額ベースでは青森が240%などと高水準だが、沖縄はカロリーベース32%、生産額ベース52%にとどまっている。
いずれにせよ八重山も沖縄も、さらには日本も、何らかの事情で外部からの食料移入がストップすれば、たちまち食糧難に陥るリスクを抱えているということだ。現代は大量の食品が生ごみとして廃棄される「飽食」の時代だが、実態はかくも危うい。
食料が国内に入らなくなる要因として真っ先に想定されるのは、戦争のような非常事態である。四方を海に囲まれた日本は、外国から陸路で食料を持ち込むことができない。敵対的な外国による海上封鎖の可能性を警戒する必要がある。
日本の国力が衰退し、外国から食料を輸入する資力が尽きるのも、有り得ないことではない。経済大国や先進国と呼ばれる現在の日本からは想像しにくいが、少子高齢化の進行、アジア新興国の台頭などで、日本の国際的地位は低下し始めている。
宇宙開発の相次ぐ失敗、新型コロナウイルスワクチンの開発遅れが示すように、かつて日本の武器だった科学技術力も、今や世界をリードするような状況ではなくなった。
台風で孤立した島で食料が入手できなくなる事態は離島住民にと手は日常茶飯事だが、これが全国レベルに広がるようであれば悪夢というほかない。
国がどのような事態に陥っても、国民に必要な食料は確保する。そのための方策を平時から考えておかなくてはならない。

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