石垣市出身の元角川書店専務、桃原用昇氏(80)=東京在=のコレクションを一般公開する「沖縄の染と織の至宝」展(主催・一般財団法人沖縄美ら島財団)が27日から、那覇市の県立博物館・美術館で始まった。石垣市出身の人間国宝・玉那覇有公氏ら8人が精魂込めて仕上げた染織作品80点が来月26日まで展示される。初日はテープカットがあり、沖縄本島だけでなく、東京や八重山からも多数の関係者が会場を訪れた。桃原氏のコレクション展は来年、石垣市でも開催が決まっている。
「染と織の至宝」展の作品は、桃原氏が長年にわたり収集した染織作品の一部で、八重山と深いつながりを持つ作家たちの作品が中心。玉那覇氏の紅型作品、石垣市在住の県指定無形文化財保持者、新垣幸子氏の八重山上布、人間国宝の鎌倉芳太朗氏の型絵染、県指定無形文化財保持者の城閒榮喜氏、藤村玲子氏の紅型、人間国宝の平良敏子氏、宮平初子氏、與那嶺貞氏の織が、ずらりと並ぶ。
城閒氏の大きな紅型幕は同展の目玉の一つ。桃原氏によると特に高額だったが、沖縄美ら島財団理事長で八重山出身の花城良廣理事長から「二度と出会うことができない作品で、他の作品を断念してでも」と強く薦められ、入手したという。他にも着物や帯など、技巧的にも精緻で、芸術的な香り豊かな作品群が目を引く。
開会セレモニーで花城理事長は、コレクションを調査するため、桃原氏の自宅に専門職員を派遣したと紹介。「職員は『まさに宝物』と言い、ぜひ展示しようと決めた」とあいさつした。桃原さんは「作品は石垣市に寄贈する。(作品を収蔵する)新博物館の早期建設を願っている」と期待した。
作家を代表して出席した新垣さんは「織り上げた作品は問屋を通じて市場に散逸するのが通常だったが、作品と再び出会えて感無量。再会を実現して下さった桃原さんと美ら島財団にお礼を申し上げたい」と述べた。
桃原氏のコレクションは多数に上るため、展示会は前・後期に分かれ、それぞれ40点ずつ展示する。前期は11月12日まで、後期は同15日から26日まで。会場は2階の特別展示室2。入場無料。