【視点】GDP転落 日本の岐路

 日本がアジアのありふれた小国となった場合、それは国際的地位の低下や国民の生活レベル下落にとどまらない問題を引き起こす。最も厄介なのは隣の超大国・中国の軍事的脅威をまともに受け、国の独立すら危ぶまれる事態になることだ。中国はGDPで日本を抜き、経済的にも軍事的も日本を圧倒する力をつけたころから、艦船派遣による尖閣諸島(石垣市)の侵奪を露骨に本格化させた。尖閣だけでなく、八重山の隣にある台湾への侵攻すら本気で考え始めているようだ。国際社会では力こそ正義であり、小国は大国の思うがまま料理される、という厳しい現実に、日本人は目覚めつつある。
 日本はようやく自前の防衛力強化に着手したばかりだが、急がないと安全保障面での対米依存は進む一方で、沖縄の米軍基地負担軽減論議にも悪影響が出かねない。
 日本の生産力が衰え、輸出が停滞すると、これまで蓄積していた国富が海外に流出し、日本という国そのものが個人と同じように「貧乏」になる現象も起こり得る。日本は食料や工業品の原材料をほとんど海外に依存しており、購買力が落ちて資源の買い付けができなくなると、国民が生きていくための必需品にも事欠いてしまう。年金や福祉などの社会的セーフティネットも機能しなくなるかも知れない。
 こうした悪夢は、日本がさしたる気概もないまま、ずるずると現状維持を目指した場合に、実際に起こり得ることだ。長期低落傾向に歯止めを掛け「大国主義」の道を進もうとするなら、日本人は政治、経済、社会システムの大改革に歯を食いしばって耐えなくてはならない。「小国主義」への転換を選ぶなら、私たちはGDPとは違う次元の豊かさ、幸福の尺度を見つけ、世界に誇れるような、日本ならではの新たな価値を創出する必要がある。
 いずれにしても、現在の平和や豊かさは永遠に続くものではない。今敷かれているレールを安閑と進むだけでは、私たちの国は子や孫の時代、大変な状況になるであろうことは、容易に予想できる。

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