米艦船の石垣寄港に抗議し、全日本港湾労働組合(全港湾)沖縄地方本部が石垣港で全面ストに突入したことを受け、石垣市議会(我喜屋隆次議長)は12日の本会議で、ストの即時解除を求める要請決議を与党と中立の賛成多数で可決した。ストで「物流が止まり、離島への食料品、日用品、医療物資の供給が中断され、住民の命やくらしに深刻な影響を及ぼしている」と指摘した。市議会が労組に対する決議を可決するのは異例。野党は「ストは労働者の権利だ」などと一斉に猛反発した。
決議を提案した与党の長山家康氏は、議会運営員会で「市民生活が危機的状況に陥っている。市議会としてストの即時解除を求めるべきだ」と説明した。
決議では今回のストについて、労働基本権として認められた団体行動権ではなく「政治目的によるスト」と強調。「離島住民の命やくらしの安全を危険にさらす行為で、看過することができない」と糾弾した。一刻も早いストの解除と、より慎重かつ責任ある行動を求めた。
要請決議は即日、全港湾沖縄地方本部に送付されたが、同本部からの反応はなく、12日もストは続行された。
市議会の本会議では要請決議を巡って与野党が論戦。野党は、内原英聡氏が「団体行動権は憲法が保障する権利であり、これを否定する意見が出てくること自体、議員の順法精神を疑わざるを得ない」と決議を批判した。全港湾がストに至った責任は米軍、日本政府、米艦船の寄港を受け入れた中山義隆市長にあると主張した。
井上美智子氏は「危険な米艦船が来ることにノーと言うのが港湾を管理する市長の仕事で、労働者はそれを求めている」と強調。
他の野党議員も「市長に根本的な原因がある」(長浜信夫氏)、「港湾が軍事利用されようとしている。港湾労働者が置かれている環境を踏まえるべき」(砥板芳行氏)、「労働者を威圧するような決議はなじまない」(宮良操氏)と決議に抵抗した。
与党は、高良宗矩氏が「過去の裁判例を踏まえ、政治ストライキは憲法の保証する行為に当たらない」と反論。
全港湾が組合員の安全確保をストの理由に挙げていることについて「同盟国である米国の乗員の休養と補給が、なぜ危険なのか全く理解できない。強固な日米同盟を堅持し、日本に脅威を与えている国への抑止力の観点から寄港は必要なものだ」と訴えた。
友寄永三氏は、過去に各地への米艦船入港で港湾労働者に危険が及んだ事例は確認されていないとして「市民を人質に取るストは許されない」と述べた。
採決では与党、中立の13人が賛成、野党8人が反対した。