「普天間飛行場の返還を盛り込んだSACО(沖縄日米特別行動委員会)合意の着実な推進に逆行しないか」(末松文信氏)、「今の県民の思いは、賛成、反対で片づけられるような状況にはない」(照屋守之氏)、「(投票する人が)例えば埋め立てには反対だが、普天間が固定化することまで理解できるか」(花城大輔氏)、「5億5千万円あれば、子育て支援、老人介護など、いろいろ流用できる」(山川典二氏)といった具合である。自民、公明会派は、投票用紙の選択肢を「賛成」「反対」以外にも増やすよう求める修正案も提出した。
自民党からも意見が出ているが「辺野古米軍基地建設のための埋め立ての賛否を問う県民投票条例」という条例案のタイトルも問題含みだ。辺野古にはキャンプ・シュワブという米軍基地が既に存在し、代替施設は、その区域内に建設される。米軍の新基地が建設されるかのようなタイトルは不正確だし、誘導的でさえある。野党の指摘に対し、提案者側は委員会での質疑で「代替施設」という文言をタイトルに入れる必要は「全くない」と述べたが、誠実さに疑問が残る。
県は辺野古沿岸埋め立て承認を撤回し、今後、国と法廷闘争に入る。県民投票条例を直接請求した「『辺野古』県民投票の会」は、県民投票をしていない場合に比べ、裁判所が「知事の撤回に裁量権の逸脱乱用があると言うことは難しくなります」と主張しており、県民投票の究極の狙いは、県有利の判決を出させることだ。基地反対派が主導する県民投票であり、移設反対が多数を占めることがほぼ確実な情勢下で、〝少数派〟となる移設容認派の声が、従来以上に圧殺される危険性も考慮しなくてはならない。
県議会は県民投票に賛同する与党会派が多数を占め、条例案は可決確実と見られるため、野党側は次善の策として修正案を提案した。与党側が野党側の意見を締め出して採決するようなことがあれば、禍根を残すだけだ。
県民投票に伴い、市町村が担う事務についても、保守系市長が在任する6市は現時点で県からの委託に同意せず「県議会で議決されていないので回答できない」などと対応を保留した。これも県民投票に対する懸念が払しょくできない証左だろう。