八重山防衛協会などが主催する「防衛講話」が、建国記念の日を迎えた11日夜、石垣市内ホテルで開かれ、防衛省防衛研究所の中国研究室主任研究官・杉浦康之氏が「中国人民解放軍とはどのような軍隊か―中国政治における役割と近代化の模索」をテーマに講演した。杉浦氏は、習近平国家主席が進める軍改革とその方向性について説明。今後、日本周辺での海空軍の合同訓練の動きを注視するよう訴え、統合作戦による対外拡張への警鐘を鳴らした。
講演では冒頭、「中国の軍隊は国の軍ではなく、党の軍隊だ」と述べ、中国軍の役割を「中国共産党独裁体制を守ること」と強調した。
2015年末の軍改革の内容では「装備品開発における軍民協力の促進」について、中国民間企業に日本企業が投資した場合でも、日本からの技術が軍に流出する危険性を訴えた。
また、「七大軍区」を撤廃し「五大戦区」を設置したが、軍事行政と作戦の両方を担っていた「軍区」と異なり、「戦区」は作戦計画に特化していると報告。意図として▽習近平の軍掌握の強化▽陸海空軍、ロケット軍の統合作戦体制の強化―などを挙げた。「中国は海洋進出を目指している。統合作戦体制の強化は外に出て行くことを意味する」と指摘した。
今後の軍の行方として、「国防と軍隊建設の近代化を基本的に実現する」との目標を以前は今世紀半ころまでとしていたが、35年に変更した点に注目。「15年の短縮は、軍の近代化が早くなっているということ。さらに50年には米国に対抗できる軍隊にすることを目標としているが、これはかなりの確率で可能だ」と述べた。
さらに陸海空軍による伝統的安全保障に加え、「サイバー」や「宇宙」を含めた新型安全保障強化への動きを危惧した。
日本周辺での軍の活動が活発化していることを踏まえ、「軍が目指すのは陸海空軍、ロケット軍の統合作戦。海空軍が協力した訓練が減ることはない。特に中国にとって沖縄は重要な地域だ」と訴えた。
講演後、八重山防衛協会の三木巖会長が謝意を述べ、八重山自衛隊家族会(上地和浩会長)、自衛隊隊友会八重山支部(蔵盛永秀部長)との「合同新年祝賀会」も行われた。