【視点】台湾総統の発言注視を

 日本は近隣諸国に恵まれていない。世界有数の軍事独裁国家である中国と北朝鮮に加え、北方領土問題を抱えるロシア、反日政策を激化させている韓国に囲まれている。中国、北朝鮮との間は小康状態にあるとされるが、それは日本の努力もさることながら、背景で米国が大きな存在感を発揮しているからだ。
 台湾は近隣ではほぼ唯一の親日国であり、日本としては蔡総統の呼び掛けに真摯に応じ、友好関係を拡大することが国益にもつながるはずだ。
 しかし台湾の親日姿勢は、政権交代によっていつでも変更される可能性がある。国民党の馬英九前政権は親中的で、日本の尖閣諸島国有化にも強く反発した。日台漁業取り決め(協定)は、八重山の漁業者が猛反対する中、尖閣問題で中台が連携する事態を恐れた日本政府の大幅な譲歩で実現したとされる。
 世界の民主主義や国際協調は、私たちが思っている以上にもろい。蔡総統が警告した「世論操作や偽情報攻撃」により、一見、民主的な選挙などで「民意」が示されたように装いながら、台湾に親中勢力が浸透していく危険性は常にある。米軍基地問題で揺れる沖縄も、さまざまなプロパガンダが容易に横行しやすい状況にある。台湾と同じ危険にさらされていると言えないか。

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