島の精神文化を形に 「八重山の御嶽 自然と文化」刊行

『八重山の御嶽 自然と文化』刊行記念交流会で御嶽への思いを語る、(右から)花城正美氏、李春子氏、前津栄信氏=7日午後、石垣市民会館展示ホール

 5日に発行された李春子編著『八重山の御嶽 自然と文化』(榕樹書林)の刊行記念交流会が7日午後、石垣市民会館展示ホールで開かれ、同書への論文寄稿者らが御嶽への思いを語り、来場者との質疑応答を行った。李氏は「御嶽は奥深い八重山の精神文化の表れ。社会を変え、問題を解決するためには、形にしないと人は動かない。だから記録に残し、本にしようと決意した」と述べた。
 同書前半は八重山の島々の60カ所の御嶽が約300枚の写真と、由来、神歌、祭り、植物などと共にまとめられている。後半は李春子、花城正美、前津栄信、傅春旭の4氏による御嶽の論考、御嶽の樹木誌、八重山諸島村落絵図で構成されている。
 交流会で李氏は、「イビ―拝殿―神庭―参道」を御嶽全体の構図として、神体も神像もなく、香炉だけが置かれている神々の聖域「イビ」(威部)の重要性を指摘。同書論考では「八重山のイビは、自然そのものを崇める『敬神・敬森』を形にした自然観・宗教観を表す構造」と表現した。
 また、水の恵みに生かされている人間社会が、祭祀や慣習を通じて日々の安寧を祈り、畏敬の念を表す「敬森・敬水」という概念を紹介。同書論考の結びで「八重山の人々が、循環する季節と自然に合わせて祭りを行い、日々の安寧を祈る空間が御嶽ともいえよう」とまとめた。
 小浜島小中学校長などを歴任した花城氏は「神への感謝、祈りの場を幼少時から見せるのは大切。御嶽の保全・継承の力になる」、石垣市文化協会顧問の前津氏は「御嶽は信仰心で守られてきたが、信仰心の衰えを感じる。人間社会がどんなに進んでも、自然への畏敬を持つことは大切」と強調した。

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