石垣島への陸上自衛隊配備計画で、沖縄防衛局が駐屯地建設工事に着手したことを受け、予定地周辺で営巣する国の特別天然記念物カンムリワシの保護を求める声が上がっていることに関し、石垣市の中山義隆市長は11日、「この地域では営巣していない可能性が高い」との見方を示した。市議会一般質問で野党の長浜信夫氏の質問に答えた。長浜氏は「あなたの予測だ。調査もしていないのに市長がこの場で言うことではない」と反発した。
長浜氏は「県、市教委、石垣自然保護官事務所、日本野鳥の会が、カンムリワシの営巣時期は工事を避ける必要があると指摘している。こういう時期にどうして工事を進めさせるのか」と追及した。
宮良長克教育部長は「現時点では工事区域の近隣で営巣などが確認されていないことから、カンムリワシの営巣時期であることを理由に工事の休止を求めることはできない」と答弁。中山市長は「カンムリワシは同じ木に営巣する習性があるという文献がある。3月で巣が作られていないということは、今後この場所で営巣する可能性は低い」と述べた。
天然記念物の保護について「いろいろ手法を取る必要がある」とした上で「市民の生命財産の危険性より希少種を守る(ことが優先する)というのは理解できない。そこに住んでいる希少動物を全部殺傷するという話ではない」と指摘。
宮良部長は、現地調査は途中であるとした上で、貴重種では「セマルハコガメ、オカヤドカリが確認されたと報告を受けている」と述べた。予定地の埋蔵文化財調査については準備中とした上で、調査期間は「2~3日」との見通しを示した。
野底由紀子市民保健部長は、現在、駐屯地建設の用地造成工事を実施している範囲で、沖縄防衛局が希少種、保全種4種類の移動・移植を事前に行ったと報告した。
長浜氏は「市民の不安や不満を残したまま、市長が防衛省と結託して(配備を)旗振りしているように見える。すべては市長の責任に帰する」と糾弾。与党からは「失礼だ」と野次が飛んだ。
防衛局が年度内に工事に着手したことで県の改正環境アセス条例が適用されなくなり、反対派から批判が出ていることについて、中山市長は「決してアセス逃れではない」と強調。配備計画の具体化から3年余りが経過していることなどを挙げた。