世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長は11日、肺炎を引き起こす新型コロナウイルス感染症について「パンデミック(世界的大流行)」であると表明した。遅きに失した感もあるが、この疫病の蔓延(まんえん)が新たな段階に入ったことは間違いない。
ウイルス発生地と見られる中国・武漢市で初めて患者が発生したのが昨年12月12日、同市が「原因不明の肺炎」に関する情報をホームページに初めて掲載したのは同30日だった。
しかし中国当局は、いち早く流行の可能性を警告した医師を訓戒処分にするなど、新型肺炎に関する詳細な情報を隠した。この医師自身も感染して死亡した。
武漢市は今年1月に封鎖されたが、直前までに500万人が市内から脱出したとの報道もあり、中国当局は初動の封じ込め対策に完全に失敗している。
日本は今月9日、ようやく中国などからの入国制限を打ち出したが、米国は1月31日の時点で、いち早く中国からの入国を制限していた。しかし米国でも感染拡大を止められず、トランプ米大統領は11日、新たな防疫対策として、英国を除く欧州からの米入国を13日から30日間停止すると発表するに至った。
この状況は、パンデミックが発生した以上、入国制限などの水際対策をいくら厳格化しても、ウイルスの侵入を完全に防止することは不可能であることを示している。
米国の入国制限にせよ、安倍政権が打ち出したイベント自粛要請や学校の一斉休校にせよ、究極的には、感染拡大のペースを遅らせる効果しか見込めないということだ。
感染拡大をスローダウンすることで、医療崩壊を防ぐことができる意義は当然大きいが、感染のリスクそのものが消えたわけではない。