【視点】初のクラスター、高まる危機感

 石垣市美崎町のキャバクラで、新型コロナウイルスのクラスター(感染者集団)が発生した。県内離島では初のクラスターで、医療体制が脆弱な環境だけに、住民には衝撃が走っている。
 県や石垣市によると、7月23日からの4連休で石垣入りした福井県の観光客6人が、23日から複数回、この店を利用した。6人は福井県に戻ったあと、新型コロナに感染していることが分かった。
 観光客に接客した女性従業員が濃厚接触者になり、30日、20代から30代の6人の感染が抗原検査で判明した。厚生労働省は、同じ場所で5人以上の感染者が発生した状況を「クラスター」と定義している。
 4連休は政府の「GO TОトラベル」キャンペーンも重なり、大勢の観光客の来島が見込まれ、その中には当然、感染者もいるであろうことは危惧されていた。悪い予感がまさに的中し、しかもクラスターまで発生する最悪の事態となった。
 県や石垣市は新石垣空港での水際対策を徹底しているが、4連休中、発熱が検知された到着客はゼロだった。無症状の感染者が存在する以上、残念ながら水際対策の実効性は高くないことも浮き彫りになった。
 今後の問題は、まず観光客6人と地元の感染者6人の足取りを追い、濃厚接触者を検査して感染の拡大を防ぐことだ。
 福井県は当初、観光客6人は「沖縄で感染した可能性が高い」と発表していたが、その後「石垣島に到着する前の段階で感染していた可能性が高い」と見解を変えた。
 6人は往路は中部国際空港から那覇経由で石垣島に入り、復路は中部国際空港の直行便を利用していた。往路のいずれかで、そろって感染した可能性が指摘されている。
 石垣島では3泊4日の日程で、市内の宿泊施設に滞在し、24日には日帰りで西表島を訪れた。滞在中、石垣島の飲食店も利用していた。
 石垣市は相談外来を開設し、福井の観光客や地元の感染者に接触した可能性のある人に連絡を呼び掛けている。人数が多いだけに「ねずみ算」式に感染が拡大する危険性も懸念されている。
 医療機関の逼迫(ひっぱく)も喫緊の課題になってきた。県立八重山病院には結核用病床も含め、感染症対応病床が9床しかなく、6人の感染で半分以上が埋まったことになる。
 「第1波」の4月ごろと同様、軽症者が療養する宿泊施設を早急に確保しなくてはならない。重症者が増え、八重山病院だけで対応できなくなった場合に備え、民間医療機関の協力を仰ぐ可能性も検討する必要がある。
 感染の再拡大が「第2波」と呼べるかどうかは別にして、専門家は「第1波より大規模になる可能性がある」と警告している。東京をはじめ、全国各地で連日、1日当たりの感染者数が過去最多を記録しており、国内の感染状況が新たな局面に入っていることは間違いない。
 県内の新規感染者数もうなぎ上りで、31日には1日当たり約70人の規模に達した。既に感染者総数は300人を突破し、九州以南では福岡県に次いで最悪のペースである。このままだと感染者数が1日で100人以上に達する状況に突入しかねない。
 今回の感染拡大で特徴的なのは、沖縄でも「夜の街」関連の感染が深刻化したことだ。那覇市の繁華街・松山のキャバクラで発生したクラスターでは30日までに27人の感染者が把握された。玉城デニー知事は、松山のスナックなどに8月1日から15日間の休業を要請する事態に追い込まれた。
 「第1波」を乗り越えたという過信が気の緩みにつながったのだろうか。新型コロナとの戦いは長期戦になるという覚悟を新たにすべきだ。
 国や県は緊急事態宣言の再発令には慎重だ。経済界からは、また経済を凍結させると、今度こそ死活問題になるという悲鳴が上がる。感染は拡大しているが、経済の急ブレーキを踏むこともできない。私たちは「第1波」より、さらに厳しい状況に直面している。

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