八重山には現在、重症者はいないが、県立八重山病院には30日現在、11人の中等症患者が入院している。
酸素投与は可能だが、重症者の治療に使われる体外式模型人工心肺ECMО(エクモ)は装備されていない。ECMОが必要な重症患者が出た場合は沖縄本島に搬送するほかないが、本島も医療機関が逼迫(ひっぱく)しており、受け入れてもらえる保証はない。
竹富町、与那国町民だけでなく、石垣市民も含め、今、重症患者が出た場合は十分な治療を受けられない可能性が高い。医療崩壊の危機が現実のものとなっている。
沖縄の新規感染者数は最多で800人を超え、その後はやや減少しているように見える。だが実際には保健所が濃厚接触者を追い切れなくなった影響で、発表数以上の潜在的な感染者がいる可能性が指摘されている。
新規感染者数に日々の増減はあるが、医療の逼迫状況などを勘案すると、事態はいささかも改善されていないと見るのが妥当だろう。
県は最後の手段としてワクチン接種の加速化を打ち出したが、県内でも石垣市や宮古島市が先行して接種を進めていることを考えると、手を打つのがあまりに遅い。人流抑制を訴える県のメッセージも県民に届いているようには見えない。
人口が多く、市町村が陸続きの本島では、なかなか県や市町村の呼び掛けが行き渡らない面もあるのだろう。だが住民の逃げ場がない八重山の小規模離島だけは、何としても「第5波」から守りたい。それこそロックダウン(都市封鎖)のような厳しい措置の検討が必要ではないか。