【視点】沖縄の未来決する1票

 玉城陣営は国政野党が支援しているが、政党色を極力薄める戦略を取った。自由党の小沢一郎代表、立憲民主党の枝野幸男代表、蓮舫参院議員、国民民主党の玉木雄一郎代表らが来県したが、玉城氏とともに街頭に立つことはなかった。「オール沖縄」「県民党」のイメージを強調し、保革を問わず支持を拡大する狙いがある。
 代わりに選挙戦後半で目立ったのは、亡き翁長氏その人だった。集会や街頭演説では翁長氏の妻、樹子さんや次男の雄治那覇市議が応援弁士を務め、翁長知事の遺志を継ぐ候補者であることを前面に打ち出した。玉城氏なら米軍基地問題で一歩も退かず、日米両政府と対峙できる。頼もしく感じた有権者も多いだろう。
 沖縄の知事選が全国的に注目されるのには理由がある。国境に位置する沖縄は、地理的に日本の安全保障を最前線で支えている。県民の悲願である米軍基地の整理縮小、日米地位協定の改定を進めながら、同時に中国や北朝鮮の侵略的な行動に備える要地であり続けなくてはならない。
 沖縄は米軍基地と尖閣諸島の双方を抱えている。県民はさまざまな苦しみを抱える。一方に偏らないバランス感覚が必要だ。
 安倍政権と翁長県政は約4年間、冷戦を続けた。沖縄振興を進める上で、国との関係はノドに刺さったトゲであり続けている。
 佐喜真氏は「対立から対話へ」、玉城氏は「沖縄新時代」をスローガンに掲げた。辺野古移設を最終的に容認するにせよ、県民の力を結集して阻止するにせよ、次の4年間のどこかでトゲを抜かなくてはならない。
 誰が新知事になっても、翁長県政からの〝バージョンアップ〟が求められるということだ。

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